”寂しい”という気持ち。
この気持ちを感じたい人はそう多くはいないと思います。
むしろ避けたい感情だと思います。
寂しさなんかなければもっと楽に生きられるのに…とまで思う人がいるかもしれません。
でも、寂しいという感情があるからこそのメリットもあったりして、それが意外と生きる上での重要な役割を担っていたりもします。
だから、寂しさを消すよりも、寂しさと上手に付き合っていくほうが良いですよということを「人は、なぜさみしさに苦しむのか」という本ではとても分かりやすく教えてくれています。
その本の内容を踏まえて、寂しさとどう向き合っていくのかを少しまとめてみました。
引用元・参考元書籍
タイトル | 人は、なぜさみしさに苦しむのか |
概要 | 人類は、なぜ「さみしい」という感情を持つのか? あなたの知らないあなたの心を脳科学が解き明かす! |
著者 | 中野信子 |
1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。
東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。 フランス国立研究所に博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。 |
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amazon評価(記事執筆時点) | ★★★★☆(4.4/5) |
なぜ”寂しさ”を感じるのか
寂しさが”つながり”を作る
さみしいという感情は、人という社会的な生物にとって必要不可欠なものであり、ときに強い痛みを伴うほど強力に発動させることで、人という種を存続させ、進化を果たしてきたと示唆されます。
一章を読み進めていると寂しさについてのこう書かれています。要するに「種の存続に不可欠な感情」が寂しさのようです。
更に読み進めると…
寂しさは危険や危機を予測する防御反応であると同時に、「生き延びること」を強く欲する力の淵源でもある
寂しいという感情は、人間が集団で生きる生き物だからこそ備わっているものだという見方ができるそうです。
つまり、寂しさがあるから繋がりを作ろうとする、集団に属そうとする。逆に言えば、今繋がりが切れていますよ、集団から外れていると感じてますよってことを教えてくれているのが”寂しい”という感情です。
寂しさは成長を促す
寂しいという感情には、その人を成長させる役割もあるそうです。
寂しいと感じる瞬間に、自己嫌悪を感じている瞬間というものもあります。こんな自分はダメだ…と自己否定が強くなり、周りがどう言っても「自分はダメだ」と殻に閉じこもったかのような態度に出ることがありますが、この瞬間にも本人は寂しさを感じています。
その自己否定の果てに、「こんな自分はダメだ、変わろう」という転機が訪れて、自分を磨くこと、成長させることへと行動を起こすようです。
寂しさという感情によって成長が促進されるのなら、寂しいと感じることは悪いことではないし、寂しさを封じ込めたり、無理に抑え込んだりせずに、時には味わい向き合うことも大切だということでもあります。
1人が好きかどうかは一歳半までに決まる
ちなみに・・・この寂しさという感情は非常に個人差があり、一人が平気な人もいれば、全然ダメという人もいます。そのような個人差は一歳半までに後天的に決まるそうです。
書籍によると、寂しさへの反応・感じ方のようなものは次の4つに分かれ、しばらく離れていた母親と再会した時の反応でその傾向が湧かれるそうです。
- 回避型:母親と引き離しても鳴かず、母親に再会しても母親に対して無関心
- 安定型:母親と引き離されると泣き、再会するとホッとして母親に抱きつく
- 不安型:母親と引き離されると激しく泣いて混乱し、再会してもなお激しく泣く
- 混乱型:回避型と不安型を行ったりきたりする
一歳半までの両親などの他者との関係の中で寂しさの感じ方の傾向が決まるそうです。
自分はどの寂しさ傾向なのかを知ってその付き合い方を覚えていくうえでも、また、友人知人や家族がどのタイプなのかを知る
寂しさという感情への思い込み
寂しさに対処するためには”寂しい”という感情についての理解を深めることが欠かせません。
寂しいという感情の持つ特徴や思い違いを持ったままだと、寂しいという感情に上手に対応できないためです。また、理解を改めるだけで解決する問題もあります。
例えば、次のような点は寂しいという感情への認識をアップデートするのにとても重要なポイントとなるかと思います。
寂しさは他人に理解されにくい
”寂しい”という感情は他人に理解されにくいという特徴を持っています。
もちろん、「今とても寂しいです」と言えば、その言葉はそのままちゃんと相手に伝わります。ただ、どの程度、どのように感じているのかということは、その言葉から想像はできませんし、理解しようとしても理解できません。
共感しようにも、理解しようにも、寂しいという感情だけはそう簡単にはいかないのです。
なので、近しい人に”寂しい”という気持ちを理解してもらえなくて行き違いが起きたり、喧嘩になったり、中には浮気や不倫に発展したりとありますが、結構無茶な要求をしているって事でもあります。
言い方を変えると”身近な人ならきっと理解してもらえる”という思い込みが生んでいる悲劇でもあります。
”寂しさは他人には理解しにくい感情である”と理解を変えることも大切なようです。
寂しさは自分の行動で解決する
寂しいと言う感情は他人にはわかりにくいという特徴を持っています。ぱっと見では寂しいと思っているのか、思っていないのかがよくわかりません。
だから、寂しさを抱えている時は、自分から寂しさを解消するための行動を起こすことがとても大切になってきます。
そして、寂しさの解決を他人任せにすると、寂しさを余計に深くしてしまったり、トラブルを引き寄せる危険性を高めることにもなります。
例えば、誰かと居れば寂しくないかな…と思って、特に波長が合うわけでもない相手と友達のフリをしていたとしても心の中から孤独が消えることはありません。むしろ自身を理解してもらえないことで余計に寂しさを感じたりすることもあります。
また、あなたを騙して何かを奪ってやろうと考えている悪人は、”寂しい”という気持ちに忍び込んできます。あなたの寂しさを紛らわせるための話し相手になったりして信用を勝ち得て、その信用を背景にして何かを奪っていきます。
寂しさは安易に寂しさを紛らわせようとすると逆効果になることが少なくない。この点を理解することもとても大切です。
寂しさを”感じやすくしている”自分に気づくことも大切
寂しさを感じることがあれば、それを自己解決するための行動を起こすことはとても大切ですが、その寂しさを感じる条件や基準を変えることができれば、根本的に寂しさを生み出す頻度を減らすことができます。
例えば次のような思い込みがあると、寂しさを感じやすくさせてしまうようです。
- 友達が居るほうが良くて、友達が居ないのはダメ
- 1人で居る人は能力が劣っている、変わり者
- 他人に迷惑をかけてはいけない
このような思い込みがあると、それが寂しさを生み出し、大きくしてしまいます。
それぞれ1つ1つを見ていけば、すべて間違った思い込み、偏った思い込みであることは明白です。
友達が居れば良いなんてことはありません。友達の定義は難しいですが、例えば、自分を理解してくれて、共感してくれて、平等で…といった存在を友達だとするなら、そんな人はこの世に1人居るかどうかではないでしょうか?
たとえ親であっても自分自身を完全に理解してくれるわけではないのに、他人にはなおさら難しいはずです。友達と呼べる存在はそう簡単に見つかるものじゃないのだから、居ないのは不思議ではありません。
なのに、友達が居ないのはダメなこと、寂しいことなのだと思い込んでいると、寂しさを自分の中で自動生産してしまいます。
このような寂しさを生み出している”思い込み”や”信念”が寂しさを生み出してしまっていることが少なくないという理解を持つこともとても大切なようです。
寂しさという感情の持つ危険性
寂しいという感情には、それ相応のちゃんとした役割が備わっています。人間には不可欠な感情なのです。
そして、その寂しいという感情はどのようなものなのかという理解も深めることで、向き合い方や寂しいという感情への捉え方が少し変化するかと思います。
それだけでも十分に大きな成長といえるのですが、それでも敢えて、「寂しいという感情はそのまま放置しているのはあなたにとって大きなマイナスになりますよ」と言わざるをえない次のような負の側面もあります。
健康リスクを高める
寂しさは健康リスクを大きく高めてしまうという事が分かっています。
- 「社会的なつながりを持たない人」は「社会的つながりを持つ人」に比べて、早期死亡リスクが1.5倍になる。これは1日15本の喫煙と同等、アルコール依存症などの過度な飲酒の2倍、運動不足や肥満の3倍に匹敵
- 「孤独を感じる人」はそうでない人と比べ、心疾患になるリスクが1.3倍、アルツハイマー病になるリスクが2.1倍、認知機能の衰えが1.2倍、うつ病になるリスクも2.7倍、自殺念慮は3.9倍になる
このようなことがすでに分かっています。
つまり、孤独は健康リスクを著しく高めるということが分かっていますので、孤独を解消することが本人だけではなく社会的にも大きなメリットがあるので、イギリスは世界で初めて孤独担当大臣をもうけて国をあげて対策に乗り込んみ(現在は廃止?)、日本もそれに続いています。
孤独は大きな健康リスクなのです。
寂しさからの逃避が依存症を生む
寂しいと感じる感情はすべての人にありますし、寂しいと感じる瞬間や出来事は誰の人生にも必ず存在しています。
ただ、そこでどのような行動を取るのかで、寂しさが成長に繋がるのか、それとも寂しさが引き金で依存症になるのかが分かれることがあるそうです。
一瞬の快楽によって脳内にドーパミンが出てきます。そのドーパミンは寂しさを瞬間的に和らげてくれます。でも、刹那てきなもの、瞬間的なものですので、ドーパミン効果が薄れると寂しさがまたぶり返してきます。
その寂しさを埋めるために、またドーパミンが出る瞬間を求める。そして依存症になってしまうというものです。
寂しさの辛さに耐えられず流されてしまう可能性は誰にでもありますから、それはつまり、誰しもが依存症になってしまう可能性があるという事でもあります。
大きく攻撃的な怒りを招いてしまう
寂しさという感情のストレスにさらされ続けることで、怒りの感情が芽生え、それが大きくなり攻撃的になるということがあるようです。
旦那が家をほったらかしにしがちな家庭で奥さんがイライラしていたりするのは、そういう事なのかもしれません。
そのような攻撃的な行動は寂しさが発端になって生まれた怒りだとは言え、怒りの行動が良い結果を招くことはまずなく、大抵はその行動によって望まない結果を招いてしまいます。
結果、余計に寂しいと感じる状況を招いてしまうことにもなりかねません。
寂しさとの向き合い方・整え方
寂しいという感情の持つメリット、そしてそのデメリットや、さらには寂しさが招く問題点などをここまで紹介してきましたので、なんとなくでも”寂しさ”というものへの認識は変わってきたと思います。
では、この寂しさにどう向き合えばいいのか。
その具体的な解決方法や対処方法が本の中では紹介されているのですが、その中からとても印象的かつすぐに活用できそうなものがありましたので、いくつか紹介させていただきます。
趣味などで緩い繋がりを持つ
趣味のつながりなどの、緩い繋がりを持つことも寂しさを和らげるための1つの方法です。
家族や友人、同僚などの強いつながりを持つと、親密度が高い分その中で孤独を強く感じることもあります。しかし、趣味などの緩いつながり、距離感がほどほどにある繋がりは距離感がある分、緩く繋がれるので、寂しさをゆるく減らすことができます。
繋がりの質を見直す
繋がりを”数”ではなく”質”で捉えることを意識することも、寂しさを埋める上では役に立つそうです。
寂しいとどうしても”多くの”他人で埋めようとする発想になりがちですが、数が多ければ寂しさは消えるのかというと、そうでもありません。
大切なのは”質”です。
では、どんな”質”の繋がりなら寂しさを埋めることができるのか?という視点で自分自身を見つめ直してみるのも、寂しさを埋める一助になるそうです。
人間関係に劇的な変化を求めない
寂しいから、寂しくない状況や環境を作りたい。そう思って積極的に他人とつながりを求めようと行動しても、なかなかうまくいかず、余計に寂しさを募らせてしまうなんてこともあります。
そこで大切なのが、”人間関係に劇的な変化を求めない”ということです。
変化を外部に求めるのではなくて、変化を内部、つまり自分自身に向けることで寂しさは和らぐことが分かっています。
例えば、”誰かに対して昨日できなかったけど今日はできたこと”を自分で評価する。それによってどんな変化が起きた、自分はどうなった…などを評価することで、自分自身の成長などの変化を感じることができ、寂しさを和らげつつ、成長にもつながっていきます。
期待も要求も批判もしない
他人に対して、「期待」「要求」「批判」の3つをしない意識を育むことも、寂しさを和らげるうえで効果があるそうです。
本の中にもこういう記述があります。
良好な関係を維持している人は、相手は自分とは違う人間であることを理解し、なにもかもすべてを共有できるわけではないことを知っています。
期待したり、要求したり、批判するというのは、相手と自分は違う人間であることの理解がまだ乏しい時に出る反応だとも言えます。相手と自分は同一の人間なんだと言わんばかりに何もかもの共有を期待するから、そうじゃない時に寂しさが募ってしまいます。
相手は相手、自分は自分。違って当然なんだから、期待しないし、要求しないし、批判もしない。線を引く。
そういう線をちゃんと引く意識も寂しさと向き合うには大切なようです。
失ったもの、今あるものへの認知を変える
失ったものに意識が集中する傾向が人間にはあるので、何かを失った時にそれに気持ちが引っ張られるのは無理もありません。
例えば、失恋をした、死別をしたという別れの場面ではやはり寂しい気持ちが強くなるはずです。その時に、過度に自分を責めたりすると寂しさがさらに強くなり、長引き、心身へ大きなダメージを与えます。
別れが寂しいのはもちろんですし、その気持ちに寄り添い、時間をかけて癒していくことが大切ですが、そこで過度に自分を責めないことも大切です。
自分を責めるのではなく、違う視点を意識的に持ち、良い面を見つけることができれば、寂しさが強くなるのを防ぐこともできるそうです。
例えば、失恋の時には「悲しい。こんな自分は捨てられて当然だ」と自分を責めるのではなくて「自分はあんな素敵な人と恋愛ができたのだから幸運だ」と意識的に思って見る。
そうすると、別れに対する認識が少しずつ変わり、寂しさが和らぎ、前向きになれたりします。
また、失ったからこそ新しいものを得るキャパシティが空きます。
別れたことによって、新しい幸せ、新しい出会いがめぐってくるチャンスを得ることができたと捉え直したとしても、何も間違いではありません。
自分自身がどう認識するのかを意図的に、自分にとってプラスになるように書き換えることも寂しさを和らげてくれます。
さみしさは克服しなくていい
「寂しさを克服しなければいけない、何かで埋めなくてはいけない」「寂しいと感じているのはダメな事だ」といった思い込みを持っているのなら、それがそもそも間違っているとも言えるそうです。
寂しさにはメリットもあります。
寂しさが無ければ人とのつながりを持とうとしないし、成長することもできません。
寂しさを感じないことが常に正しいというわけではありません。
寂しさを感じれるからこそ得られることもありますから、寂しいと感じている自分をダメ出しするのではなく、そう感じているんだな…ってぐらいに自分を俯瞰で捉えるぐらいが丁度いいようです。
まとめ
寂しさとは何か。なぜ寂しさを感じるのか。寂しさはどんな影響を与えるのか、そしてどう向き合えばいいのか。
脳科学者の中野信子先生が最新脳科学の知見を用いて書かれた「人は、なぜさみしさに苦しむのか」の内容を土台にしてまとめてみました。
全ての人の中に寂しいという感情は備わっています。それは人とつながりを持ち、自分を成長させるための原動力ともなっていますから、不可欠な感情なのです。
しかし、寂しさは時に心身を痛めつけたり、自身の人生にトラブルを巻き起こしたり、今ある関係性を壊しかねないものでもあるので、寂しさの対処法を知識として持ち、実践もしてみる。
そんな寂しさへのほどよく誰にでも可能な向き合い方を「人は、なぜさみしさに苦しむのか」では教えてくださっています。
是非参考にしていただければなと思いますし、さらに具体的に知りたいという事でしたら手に取って読まれてみることをオススメします。
ここでは書いてない事のほうが多いですので、さらに勉強になるでしょうし、それはあなたの人生を大きく飛躍させてくれるはずですよ。
引用元・参考元書籍
タイトル | 人は、なぜさみしさに苦しむのか |
著者 | 中野信子 |
amazon評価(記事執筆時点) | ★★★★☆(4.4/5) |
寂しさを味方にできます