日本では少子化がものすごい勢いで進んでいます。
先進国いずれも少子化は課題ではありますが、中でも日本(ならびに韓国なども)は移民を受け容れなければ存続が危ういというレベルにまで来ていますので、なんとかしなければいけない喫緊の課題です。
ただ、30年間にわたって少子化問題の解決を掲げながらも着々と少子化は進んでいて、政府のやることなすこと、これといった効果はなく、税金をただただ無駄にしている状態です。
では、なぜ少子化がこんなにも進行し、改善しようとしても一向に功を奏さないのか。政府の施策は的外れに終わるのか。
そのような事を「恋愛結婚の終焉」が面白くまとめていましたので、紹介させていただきます。
引用元書籍
タイトル | 恋愛結婚の終焉 |
概要 | 本書では、「結婚には恋愛が必要だ」という呪縛から人びとを解放する必要性を説き、若者の「恋愛離れ」を受け入れたうえで、「結婚に恋愛は要らない」とする「共創結婚」の重要性を、歴史学や脳科学、行動経済学など、多方面から検証、提案する。 |
著者 | 牛窪恵 |
1968年東京生まれ。マーケティング会社インフィニティ代表取締役。同志社大学・ビッグデータ解析研究会メンバー。 財務省・財政制度等審議会専門委員、内閣府・経済財政諮問会議 政策コメンテーター。数多くのテレビ番組のコメンテーター出演やトレンド分析でも知られる。 |
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amazon評価(記事執筆時点) | ★★★★☆(4.2/5) |
なぜ少子化が進んでいるのか
少子化の要因は”婚姻者数”の減少
少子化が進んでいる理由として、育てる環境の問題などが理由として思い浮かぶかもしれませんが、もっと直接的な原因は”婚姻数”にあるようです。
婚姻数が減ったから、出産数が減った。
それが少子化のダイレクトな理由だ、というものです。
結婚している女性の出産人数は変わっていない
結婚した女性が平均何人の子供を持つのかという人数を示す完結出生児数という指標があります。
完結出生児数(かんけつしゅっしょうじすう、完結出生子ども数)とは、既婚女性の出生力の指標のこと。結婚持続期間15年から19年の夫婦の平均出生児数を最終的な出生児数と定義し、1940年(昭和15年)から通常5年ごとに国立社会保障・人口問題研究所により調査されてきた。
完結出生児数 - Wikipedia
この数値、徐々に下降傾向ではありますが、30年間ほぼ横ばいで推移していると言ってもいい程度には安定しています。
つまり、”結婚すれば子供を平均2人は持つ”のです。
日本が人口を維持するためには2.0という出生数は最低ラインですが、その最低ライン程度には既婚女性は子供をもうけています。
婚姻数が顕著に減っている
結婚を持てば2人の子供を持つことが安定的に定着しているのなら、現在の少子化の理由はもうお分かりだと思います。
シンプルに”結婚する人の数が減っている”という部分にあります。
結婚し、子供をもうけて…という余力がある人を対象にし、一生涯を見込んで終わる人の割合を示した上記のグラフでは、確実に生涯未婚率が年々増えています。
出生数・出生率を示すグラフを見ると、未婚率の上昇と出生率の低下は反比例で関係しているのが見てとれるかと思います。
このような事から、未婚者が増えているのが少子化の主要因で、未婚者を減らすための施策に重点を置くことが少子化対策の本丸と言っても過言ではないようです。
少子化を改善するには?その課題
結婚者数をいかに増やすのがカギ
”少子化の問題は婚姻者数の減少である”という前提に基づき、ではどうすれば改善できるのか?を考えるとするなら、それは結婚者数をいかにして増やすのか?ということが今ある課題ということになってきます。
逆に言えば、これだけネットが普及し、出会いにハードルが下がったように感じる現代において、なぜ結婚をする若者が減少しているのか?という事が課題になってきます。
出会いの自由度は恋愛強者にのみ恩恵
ネットが普及するにつれて、出会いの自由度はどんどん向上しているように感じていますし、実際にどんどん出会いの難易度は下がっている部分もあるのは事実だと思います。
ただ、そういった利便性を得られるのは”恋愛強者”と言われる人たちだけのようです。
具体的に言えば、恋愛への積極的な行動を厭わない人たちです。そういった人たちにはネットの利便性は追い風になります。半面、恋愛に消極的な人は環境が変わっても行動を起こさないので得られる成果に大きな変化はありません。
その最たる例がマッチングアプリです。
出会いを提供するマッチングアプリによって出会いのハードルがグンと下がりましたが、その利便性を享受できているのはそもそもとして恋愛に積極的な人達です。そのような方はマッチングアプリが無くても出会いを求めて行動を起こせる人たちです。
出会いに消極的な人達は、マッチングアプリがあってもそれをを使うに至らないというのが現状のようだという仮説が書籍の中で挙げられています。
お節介を焼く人の減少
恋愛弱者の人たちは現代になって急に登場したわけじゃなくて、比率として現代と同じだけ居たと考えるのが自然だと思います。(もしかしたら、情報も何もない時代ほど多かった可能性もあります)
積極的に行ける人は自分でどんどん恋愛を経験するけど、そうじゃない人も一定数必ずいました。では、その恋愛弱者の人たちはどのようにして結婚していたのか?となると、お見合いを組んだりのお世話を焼いていた人たちの存在が考えられるようです。
未婚の男女が居ると聞けば、半強制的にマッチングの機会を設けて成婚まで導く。そういうお世話をしている方が地域にいたものです。
ただ、その人たちの存在が希薄になるにつれ、結婚数が減少していった。
そして、少子化になった。
そう解釈できることもできそうです。
つまり、恋愛弱者が恋愛をするにはどうするのか?という事が課題であって、そこをクリアしない限り婚姻数は増えず、婚姻数が増えないから子供が増えない、少子化になるというサイクルは止められないのかもしれません。
少子化の根本的解決策として
恋愛・結婚・子育てに独立性を持たせるという考え方
恋愛弱者と呼ばれる方々が恋愛しやすい環境を用意する。
そうすることで少子化は改善するかもしれません。
例えば、AIで「あなたと相性のいい人はこの人ですよ」と常に教えてくれるような仕組みを国が作り強引にでも進めれば状況は変わるかもしれません。
ただ、それはそれで「”恋愛をしない”という自由を阻害しているのか?」という問題に直面するかもしれませんから、現実的ではないのかもしれません。
そこで、本の中で提唱されているのが恋愛・結婚・子育ての三位一体の価値観の分離です。
恋愛・結婚・子育てが三位一体になっているのが日本の結婚観・恋愛観になっていますが、これを見直して分解させてしまうことが少子化のサイクルを断ち切る一手になるという考え方です。
恋愛のハードルの高さが結婚を遠ざけている
結婚を増やすためには、恋愛をする人を増やさなければいけない。
この考え方の土台にあるのは「恋愛の延長上に結婚がある」という価値観です。
しかし、恋愛そのものに対するハードルが以前より高くなっているのかもしれないという見方もできます。
恋愛に関する情報があふれかえり、恋愛がいかに面倒なものかが知れ渡ってしまった。なのに、恋愛をしなければいけないのか!?とストレスを感じる人も居るかとは思いますし、面倒なことに前向きになれないように人間は造られています。
著者がホンマでっかテレビで共演している澤口教授も次のように言っているそうです。
「脳は神経システム的にも、余分なコストがかかる『面倒』なことを避けたがります。それだけ恋愛は、原理的にみて非常に面倒な作業なのです」
恋愛が面倒なものだとバレてしまっている現在において、恋愛を拒絶する人が居るのは仕方がない、なぜなら脳は省エネを好みますからということが本の中で書かれています。
要するに、恋愛のハードルがぐんと上がっている現代において、恋愛から結婚へ進むべきという価値観が根強い日本で婚姻数が減るのは自然な結果だと言えます。
三位一体の価値観は近年フランスから来た価値観
そもそもとして、日本は恋愛・結婚・子育ての三位一体の価値観の国ではありませんでした。
恋愛は恋愛、結婚は結婚と割り切った価値観があった国です。大河ドラマなどの戦国時代を描いた作品での婚姻の在り方を見ていると、それは良くわかるかと思います。
結婚は結婚として別物として捉えていたし、恋愛や遊びはやはり結婚とは別物という自由かつ奔放な恋愛スタイルの国でした。
しかし、フランスで生まれた恋愛結婚という価値観が入ってきて、その象徴のように時の皇太子(現上皇)が一般人女性と恋愛結婚するというラブロマンスも身近で体験して…などを経て、恋愛結婚の地位が上昇していきました。
つまり、日本人はずっと三位一体の価値観で生きてきた民族ではなく、むしろバラバラのものとして捉えてきた歴史がその前にあります。三位一体の価値観は比較的新しい価値観なのです。
それならその三位一体の価値観そのものを現代版に変えようよって提案が書籍内で為されています。
現に、今の日本は、この三位一体の価値観に苦しんでいます。
- 子供をもうけるには結婚は不可欠だし、結婚するには恋愛をしなくちゃいけない。
- 恋愛をするといっても、良いも悪いも色々あることをすでに知っているので前向きになれない。
- それならもう恋愛そのものを諦めて未婚でもいいや…という人が増えている
これが日本の実態だと思います。
この恋愛結婚という価値観、三位一体の価値観を分解して、恋愛、結婚、子育ての3つを独立したものとして捉えて社会を変えていく。
過去に戻るというよりも、新しい価値観としてブラッシュアップしたものとして3つを独立したものとして捉え直すことが少子化を止めることになるのでは?とされています。
現状は強い抵抗を感じる人が多い提案かもしれませんが、少子化を本気で止めるなら、そういうパラダイムシフトも検討してみては?ということが本の中で事細かに書かれています。
まとめ
今の日本では少子化が進んでいます。
国の存亡がかかるレベルにまで進行していますが、その原因を紐解いていくと、”恋愛の難易度の上昇”という課題があり、それを乗り越えて少子化を解決するには、恋愛・結婚・子育ては三位一体であるとする価値観を変える時期に来ているのでは?というのが「恋愛結婚の終焉」で書かれている、少子化問題を解決するための提案です。
これが正解だというつもりはもちろんありませんが、あなたなりの思考を巡らせて、なぜ少子化なのか、どうすれば解決に向かうのかを考える一助になればと思い書かせてもらいました。
参考になりましたら、幸いです。
引用元書籍
タイトル | 恋愛結婚の終焉 |
著者 | 牛窪恵 |
amazon評価(記事執筆時点) | ★★★★☆(4.2/5) |
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