【ビッグモーター】不正車検事件

自動車

中古車販売、車検の最大手のビッグモータ。

そのビッグモーターで、車検や修理時に故意に車体に傷をつけ、その修理の費用を上乗せして請求するという不正行為が発覚し問題視されています。

そんなビッグモーターの車検不正、修理不正についてまとめました。

ビッグモーターによる車検不正事件・修理不正事件の経緯

ビッグモーター社で行われていた車検や修理における不正行為には、下記のようなものがあるとして公式サイトにまとめられています。

不正行為の内容

  1. ①入庫時の損傷確認段階
    • 損傷の作出
    • 損傷の存在や範囲を誤認させる写真撮影
  2. ②板金段階
    • タワー牽引の偽装
    • 不要なタワー牽引の実施
    • ダミーのサフ(下地処理)やパテ(補修処理)
    • 不要な板金作業や部品交換の実施
  1. ③塗装段階
    • 高機能塗装(耐スリ)施工の偽装
    • 不要な塗装作業の実施
  1. ④損保会社との協定段階
    • 実際に施工された修理と異なる内容での協定見積り作成

当社板金部門における不適切な請求問題に関するお詫びとご報告

上記のような損傷や不要な修理を行い、それを上積みして修理代金を請求していたという事案が確認されたという報告があがっています。

ビッグモーターによる車検不正事件・修理不正事件の原因

なぜこのような事件が起きたのかという事には次のような背景があります。

  1. 不合理な目標値設定
  2. コーポレートガバナンスの機能不全とコンプライアンス意識の鈍麻
    • 内部統制体制の不備
    • 適正手続きを無視した降格処分の頻発
    • コンプライアンス意識の鈍麻
  3. 経営陣に盲従し、忖度する歪な企業風土
  4. 現場の声を拾い上げようとする意識の欠如
  5. 人材の育成不足

当社板金部門における不適切な請求問題に関するお詫びとご報告

具体的には以下のような背景があるために起きた事件であると考えられます。

パワハラの蔓延る縦社会型の会社

上司と部下の関係性が完全な上下関係、上の言うことは絶対であり、下の者はそれに対して一切の反論は認められないとする状況が完成していたという意見が見られます。

そのため、後ほど説明する、”過大なノルマ”に対して受け容れるしかなく、その過大なノルマを達成するために車検や修理で持ち込まれた車体をさらに傷つけて修理費を高額にするという細工をせざるを得ないという状況に追い込まれたとされています。

無謀な利益追求とノルマ

利益を求めることは会社としては当然のことではありますが、その求める利益額が常識的な範囲を大きく超えていたということが問題の要因でもあります。

その利益額に到達するために課されたノルマを達成するには、従来の修理依頼などでは到底達成できないため、故意に車体に傷をつけ、本来は不要だった修理を増やし、その修理代を請求することで達成させていたという背景があります。

参考ページ

ビッグモーターによる車検不正事件・修理不正事件の解決に向けて

不正が発生したことで、ビッグモーターは次のような解決策、改善策を講じて会社を健全なものへと変えていくと表明されました。

経営者の報酬の返上

歪か企業風土を作った責任があるとして、以下の通りに経営陣が報酬を自主返納することを決定しました。

創業者の兼重宏行をはじめとする全取締役はコーポレートガバナンスの機能不全や歪な企業風土醸成に重大な責任を負っているため、以下のとおり報酬の自主返上を実施いたします。

  • 代表取締役社長 報酬100%  1年間返上
  • 取締役副社長  報酬50%  3か月返上
  • 専務取締役   報酬30%  3か月返上
  • 常務取締役   報酬20%  3か月返上
  • 取締役     報酬10%  3か月返上

当社板金部門における不適切な請求問題に関するお詫びとご報告

経営陣の交代

上意下達が徹底されている組織における上司の責任は当然重く、その責任は組織の長であるトップが最も重いものです。

そこで、創業社長と息子に当たる副社長はその座を譲ることを決断されました。

今後は和泉伸二氏が新社長として会社の信頼回復と再建に邁進されるそうです。

過度なノルマを課さない

再発防止に向けて以下のような点も今後推進していくとして、報告書に挙がっています。

  1. 適正な営業目標の設定
    • 従来の実績100%の評価基準を改め、経営理念である「常にお客様のニーズに合ったクオリティの高い商品、サービス、情報を提供する」を体現すべく質を重視した目標を設定します。
    • 業績評価、給与体系についても、工程管理、品質の項目を重視した内容へ見直しを行います。
  2. リスクマネジメントを実行的に行うための内部統制体制の整備
    • 取締役会機能を十全化すべく、毎月1回、全役員参加の取締役会を開きます。
    • コーポレートガバナンス改善のために社外取締役を迎え入れます。
    • 内部統制体制を改善するため、作業や業務の監査を行うテクニカルサポート部員を増員して不正行為の防止・早期発見を行います。
    • 社内システムを改修して不正ができない環境を構築します。
    • 懲戒処分の運用の適正のために、賞罰委員会の実施、及び外部専門家の参加を行います。
    • コンプライアンス担当取締役を任命し、かつ取締役会直轄のコンプライアンス委員会を設置します。
    • 外部専門家による経営陣に対するコンプライアンス研修を実施します。
  3. 企業風土改革
    • 経営陣は「不条理な上命下服を強いる」と指摘を受けた企業風土を深く反省するとともに、現場との対話の機会を創出して、企業理念や適正な営業目標の理解や得心を通じて、顧客第一の企業風土の醸成に努めます。
  4. 現場の声を拾い上げる仕組みの構築
    • 現場と経営陣の円滑なコミュニケーションを促進するための現場巡回の際の個別面談を実施します。
    • 社内ホットラインを開設するとともに、外部通報窓口の設置を含めた内部通報制度の改善を行います。
  5. 従業員教育の強化
    • フロント業務、現場業務それぞれの優秀者または外部指導員による定期的なフロント、板金、塗装の全スタッフのスキルアップ研修を実施します。
    • この度判明した不適切行為の内容やその発生原因を活用した、実効的なコンプライアンス教育を実施します。

当社板金部門における不適切な請求問題に関するお詫びとご報告

過度なノルマや強烈な縦社会組織によるパワハラが横行する社風が事件を生んだとして、それらを生み出さないための企業改革に取り組むという宣言のようです。

ただ、新たに社長になった和泉伸二氏は、就任から1か月ほどして更なる売上アップを全社員に求める号令を発したとされていますので、過度な売り上げノルマを求める姿勢は変わらず、不正はまた起こりうるかもしれません。

参考ページ

最後に

ビッグモーターの不祥事から、次の2点を学ぶことができます。

  • 過度な縦社会になっていないか
  • 無謀なノルマを課していないか

命令系統をハッキリさせることが組織には大切ではありますが、それが有無を言わせない圧力を生み出すことになっていないか。

そして、過度なノルマを課していないか。

正しいことを現実的な状況の中で行ったとしても到達できないノルマは、不正をする十分な動機となりえます。組織がパワハラを含んだ上意下達の環境であればあるほど、そのノルマが不正を生む要因になります。

あなたの会社も同じような状況になっていませんでしょうか?

よければ現状をよりよくするための一助として参考にしてください。

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